相続人と法定相続人の違いとは?基礎知識と役割を徹底解説

相続において「相続人」と「法定相続人」という2つの用語が登場しますが、これらは同じものではありません。相続人は、故人(被相続人)が遺産を受け継ぐ権利を持つ人ですが、法定相続人とは、民法で定められた一定の範囲の相続人を指します。ここでは、相続人と法定相続人の違いをわかりやすく解説し、それぞれの役割や法律上の意義について詳しく見ていきます。

相続人とは?まずは基本を押さえよう

相続人とは、被相続人(亡くなった方)の財産や権利を相続する権利を持つ人のことを指します。遺言がある場合、遺言で指定された人が相続人として財産を受け取ります。一般的に相続人には家族や親族が選ばれますが、遺言書で友人や法人などが指定される場合もあります。

  • 遺言による指定が可能:遺言で特定の人を相続人に指定でき、家族以外の人が含まれることもあります。
  • 被相続人の意思が反映:被相続人の意思を尊重するため、特定の相続人が財産の一部、または全部を受け継ぐことも可能です。

法定相続人とは?民法で定められた相続の範囲

法定相続人は、被相続人が遺言を残さずに亡くなった場合、または遺言が一部しか効力を持たない場合に、法律に基づいて相続権を持つ人を指します。配偶者や子ども、親や兄弟姉妹など、家族や親族が対象であり、法定相続分に従って財産を分配するための基準となります。

  • 民法に基づく相続人の範囲:法定相続人は民法で明確に規定されています。
  • 相続の優先順位:配偶者は常に相続人となり、子どもや親、兄弟姉妹のうち、どの範囲までが法定相続人となるかは順位が定められています。

相続人と法定相続人の違い

相続人と法定相続人には以下のような違いがあります。

  1. 選ばれる基準
    相続人は被相続人の遺言に基づいて選ばれるのに対し、法定相続人は民法によって範囲が定められています。遺言がない場合には法定相続人が財産を相続することになります。
  2. 法定相続分の違い
    法定相続人には法定相続分が定められており、財産が均等に分配される基準がありますが、相続人の場合は遺言によって自由に配分が決められるため、割合は法定相続分とは異なることがあります。
  3. 法的な手続きの違い
    相続人は遺言に基づいて相続を受けるため、遺言執行者による手続きが必要になる場合が多いです。一方で、法定相続人は民法に基づく法定相続分に沿って自動的に相続が行われるため、遺言がなくても基本的な手続きが進められます。

法定相続人の範囲と優先順位

法定相続人には順位があり、配偶者は常に相続人として優先されますが、その他の法定相続人には以下の順序が定められています。

  1. 第一順位:子ども
    被相続人に子どもがいる場合、配偶者と子どもが法定相続人となり、配偶者が半分、子どもが残りを等分します。
  2. 第二順位:直系尊属(親など)
    子どもがいない場合、親が法定相続人となり、配偶者と親で財産を分けます。
  3. 第三順位:兄弟姉妹
    子どもや親がいない場合、兄弟姉妹が法定相続人となり、配偶者と分け合います。

法定相続人の「法定相続分」とは?

法定相続分とは、法律で定められた相続人ごとの相続割合のことです。たとえば、配偶者と子どもが法定相続人の場合、配偶者は1/2、子どもは残りの1/2を等分して相続します。法定相続分に従って財産を公平に分配することで、相続トラブルを未然に防ぐ効果もあります。

不動産相続時に必要!相続登記とは?

不動産を相続した場合、所有権を正式に相続人に移す「相続登記」が必要です。この手続きをしないと、不動産が未登記のままになり、売却や権利の行使が難しくなるため、手続きの流れや注意点を知っておきましょう。

相続登記の流れ

  1. 必要書類を準備する
    戸籍謄本や被相続人の住民票除票、遺産分割協議書(協議が行われた場合)などを準備します。
  2. 登記申請書を作成
    法務局で申請するための「登記申請書」を作成します。法務局のウェブサイトでも雛形が提供されています。
  3. 法務局へ申請
    登記申請書と必要書類を法務局に提出します。法務局に直接持ち込むか郵送でも提出可能です。
  4. 登記完了証の受領
    手続きが完了すると「登記完了証」が交付され、所有権が正式に移転されます。

相続登記の注意点

  • 期限はないが早めの手続きを
    相続登記には法的な期限はありませんが、放置すると権利関係が複雑化し、他の相続人や第三者とのトラブルの原因になります。
  • 遺産分割協議の重要性
    複数の相続人がいる場合、事前に「遺産分割協議」を行い、誰が不動産を相続するかを決めておくことが必要です。
  • 持ち分の共有問題
    登記を複数人の共有名義で行うと、後の売却や分割が複雑になり、トラブルの原因となります。
  • 相続人の所在不明
    相続人が多い場合、一部の相続人の連絡先が不明だったり、海外在住の場合、協議が困難になります。
  • 費用が発生する
    相続登記には登録免許税などの費用がかかります。税額は不動産の固定資産税評価額の0.4%で計算されるため、事前に確認しておきましょう。

相続登記しないリスクとは?

  • 売却や融資ができない
    登記がされていないと、不動産の売却や担保設定ができず、資金調達や処分が困難になります。
  • 所有権が不明確になる
    登記をせずに放置すると、相続人が亡くなり、新たな相続人が増え、所有権が複雑化して相続が難しくなります。

まとめ:相続人と法定相続人を正しく理解し、円満な相続を実現しよう

相続人と法定相続人は似た言葉ですが、法律上で異なる役割を果たします。相続人は遺言によって指定された相続者であり、被相続人の意思を反映するものです。一方、法定相続人は、民法に基づいて相続の範囲や割合が決まっています。円満な相続を実現するためには、相続人と法定相続人の違いを正しく理解し、それぞれの権利や義務を尊重することが大切です。

また、不動産を相続した時の相続登記については、不動産の所有権を正式に移転する重要な手続きです。事前に流れや必要書類、注意点を把握しておき、遅れなく登記を済ませることが、トラブルのないスムーズな相続につながります。

知らないとやばい?相続税の仕組みと節税ポイント

家族が亡くなった後、その財産を引き継ぐときにかかる「相続税」。しかし、すべての相続に税金が発生するわけではなく、一定の基準を超える財産がある場合に課税対象になります。ここでは、相続税の基本的な仕組みや計算方法、そして控除制度などについて解説していきます。

相続税がかかる場合とかからない場合

相続税はすべての相続にかかるわけではありません。まずは、以下の基礎控除を超えた財産にのみ相続税が課されるという仕組みを理解しておきましょう。

基礎控除とは?

相続税の基礎控除は、「3,000万円+600万円×法定相続人の人数」で計算されます。たとえば、法定相続人が2人いる場合、基礎控除額は「3,000万円+600万円×2=4,200万円」となります。相続財産がこの基礎控除額以下であれば相続税はかかりません。このため、家族構成や財産総額によっては相続税が発生しないケースも少なくありません。

相続税の計算方法

相続税の計算は少し複雑ですが、流れを順に押さえておくことで理解しやすくなります。

ステップ1:課税対象の財産を確定する

まず、相続財産をリストアップし、合計額を確認します。対象となる財産には、現金や不動産、株式などさまざまな資産が含まれます。一方で、借金や未払金といった負債は差し引きできるため、純資産を算出します。

ステップ2:基礎控除を引く

前述の基礎控除額を財産総額から引き、相続税が発生する金額を確認します。基礎控除後の残額が課税対象額です。

ステップ3:法定相続分に応じた税率で計算

残った課税対象額を、法定相続分で各相続人ごとに分け、そこに相続税の税率を掛けて個別の税額を算出します。税率は財産額によって変わり、10%から55%までの幅があります。

相続税の控除と軽減措置:使える制度を知ろう

相続税には、基礎控除のほかにもさまざまな控除制度が設けられています。これらを上手に利用することで、相続税の負担を軽減することが可能です。

1. 配偶者控除

配偶者に対する相続税の控除は非常に手厚く、法定相続分もしくは1億6,000万円のいずれか大きい方の金額まで非課税となります。これにより、配偶者の生活を守るための財産がしっかり確保される仕組みになっています。

2. 未成年者控除と障害者控除

相続人が未成年の場合、一定額が控除されます。障害者にも控除が適用されるため、家族構成に応じて相続税負担を軽減できます。

相続税の申告と納付の流れ

相続税の申告期限は、被相続人が亡くなった日から10ヶ月以内です。この期限までに、相続財産の評価を確定し、申告書を提出する必要があります。

相続税の納付方法

納付は原則として一括ですが、資産が多い場合、分割払い(延納)や財産をそのまま納付する物納が可能です。不動産や株式が多い場合は、物納も検討するとよいでしょう。

不動産相続で問題になりやすい点

動産を相続すると、評価額に応じた相続税が発生しますが、相続人が複数いる場合にはトラブルが起きやすくなります。

  • 評価額の合意が難しい:不動産の評価額に納得できない相続人がいると、分割方法や相続税の負担について意見が対立することがあります。
  • 現金化の困難:不動産は現金と異なり分割しにくいため、売却や共有に伴う手続きが遅れることがあります。

トラブルの解決方法

  • 専門家の活用:税理士や不動産鑑定士に相談して公正な評価を依頼し、スムーズな分割方法を見つけることがポイントです。
  • 遺産分割協議書の作成:相続人全員で協議書を作成し、不動産の分割方法を明確にすることで、後々のトラブルを防ぎます。
  • 現金化の検討:全員の合意が難しい場合は、不動産を売却し、得た現金を分配するのも1つの方法です。

不動産の相続税計算方法

不動産の相続税は「路線価」や「固定資産税評価額」を基に算出されます。以下は一般的な計算の流れです

  1. 不動産の評価額を求める:国税庁が定める路線価または固定資産税評価額で不動産の評価を計算します。
  2. 基礎控除を引く:相続財産全体の評価額から基礎控除(3,000万円+600万円×法定相続人の人数)を差し引きます。
  3. 税率を掛ける:控除後の課税対象額に相続税率(10%~55%)を掛けて税額を算出します。

まとめ:相続税を知って家族に負担をかけない相続を目指そう

相続税はすべてのケースで発生するわけではなく、一定の財産額を超えたときにのみ発生します。控除や軽減制度を理解し、しっかりとした計画を立てることで、相続税の負担を減らすことができます。まずは基本的な仕組みを押さえ、必要に応じて専門家のアドバイスを受けながら、家族が安心できる相続を目指しましょう。

相続トラブルを防ぐ!遺留分の計算方法と遺産相続で知っておきたい重要ポイント

遺留分とは?必ず知っておきたい相続の最低保証

遺留分とは、被相続人が遺産を誰かに多く譲る場合でも、配偶者や子どもなどの法定相続人に最低限の財産を確保するために認められた権利です。遺言で相続分が著しく偏っていても、遺留分を請求することで最低限の相続分を確保できます。これにより、相続トラブルを防ぎ、法定相続人に公平な分配が行われます。

遺留分の計算方法とは?具体例で分かりやすく解説!

遺留分は相続人の種類によって割合が異なりますが、基本的に法定相続分を基準にしています。以下は計算手順です。

1. 遺産総額の確定

遺留分の計算はまず、相続対象となる財産の総額を確定することから始めます。これには現金、不動産、株式などが含まれます。また、被相続人が生前に行った一定の贈与も遺産総額に含められる場合があります(特別受益と呼ばれるものが該当します)。

2. 遺留分権利者の確定

次に遺留分権利者を確認します。遺留分を持つのは配偶者や子ども、直系尊属(親など)であり、兄弟姉妹には遺留分がありません。権利者の確定ができたら、それぞれの法定相続分を確認します。

3. 遺留分の割合を適用

以下のステップで計算しましょう。

配偶者と子供が相続人の場合:法定相続分の1/2

親のみが相続人の場合:法定相続分の1/3

遺留分の具体例

例1)総資産2,000万円で、相続人が配偶者のみ場合。

この場合、法定相続分は全て、遺留分はその1/2になるため、以下のようになります。

  • 配偶者:2,000万円 × 1/2 = 1,000万円

例2)総資産3000万円で、相続人に配偶者と子ども2人がいる場合

法定相続分は配偶者が1/2、子ども2人で1/2なのでなので一人当たり1/4です。遺留分はそれぞれの法廷相続分の半分なので

  • 配偶者:3,000万円 × 1/2 × 1/2 = 750万円
  • 子ども1:3,000万円 × 1/4× 1/2 = 375万円
  • 子ども2:3,000万円 × 1/4× 1/2 = 375万円

例3)総資産3000万円で、相続人が親だけの場合

 親だけの場合、遺留分は1/3のため、以下のような計算になります。

  • 配偶者:3,000万円 × 1/3 = 1,000万円

遺留分請求の際の注意点

遺留分侵害額請求の手続きについて詳しくはこちら

1. 時効に注意
遺留分侵害額請求には期限があり、被相続人の死亡を知ってから1年、または相続開始から10年が経過すると請求権は失効します。期限を過ぎないよう早めに対応しましょう。

2. 相続分の公平な調整
遺留分は財産そのものではなく金銭で請求されるため、特定の財産を分割することなく公平な相続が行えます。交渉が難航する場合は専門家に相談し、法的手続きを進めるのがスムーズです。

3. 遺留分の適用対象外に注意
兄弟姉妹には遺留分が認められていないため、請求の対象にはなりません。

遺留分トラブルに備えよう!トラブル事例

最低限の財産を確保してくれる遺留分ですが、これが時に不動産相続のトラブルとなります。不動産に関わる遺留分トラブルの事例をご紹介し、解決方法や予防策について解説します。


事例1:兄弟間での不公平な遺贈

遺言で不動産を兄だけに譲ると書かれた場合、弟が「遺留分が少なすぎる」と不満を抱くことがあります。こうしたケースでは、話し合いがまとまらず裁判に発展し、遺産分割が遅れる恐れがあります。

  • 解決方法:弟と兄で話し合い、弟に遺留分を現金で補償する方法をとります。
  • 予防方法:遺言に兄弟双方の取り分を考慮する、または事前に全員で話し合いを行うことが有効です。

事例2:親の再婚による相続問題

親が再婚し、遺言で再婚相手に家を譲ると書かれた場合、前妻の子供たちが遺留分を求めるケースです。こうしたトラブルは、再婚後の家族間の意思疎通が不足していると起こりやすくなります。家庭裁判所で調停となり、感情的な争いが続く可能性があります。

  • 解決方法:再婚相手が現金で補償する、または不動産を売却し、子供たちに遺留分を分配します。
  • 予防方法:親が再婚相手に不動産を譲りたい場合、事前に子供たちとも相談し、相続内容を納得してもらうのが重要です。

事例3:家業を継ぐ長男への相続

親が家業を長男に継がせたいと考え、不動産を含む財産すべてを長男に相続させると、他の兄弟が不公平に感じることがあります。これにより、家業と兄弟間の関係に影響が出るだけでなく、兄弟間の争いが長引くと、家業の運営にも支障が出る可能性があります。

  • 解決方法:兄弟間での話し合いにより、他の兄弟へ現金などで遺留分を補償する方法がとられます。
  • 予防方法:家族と一緒に遺言内容を事前に話し合い、納得のいく分配案を用意しておくとよいでしょう。

まとめ:遺留分で最低限の相続権を確保しよう

遺留分は、法定相続人が最低限の財産を相続できるようにするための制度です。遺言で法定相続分が侵害されている場合でも、遺留分を請求することで自分の権利を守ることができます。遺留分は相続人の権利を守る重要なポイントですので、万が一の際に備え、相続の基本としてしっかり理解しておきましょう。

親の遺言書を発見したら?親の遺言と遺留分のトラブル回避法を徹底解説!

親が亡くなり、遺言書を発見した際には、いくつかの手順と法的考慮が必要です。親族間のトラブルを避けるためにも、遺言の内容をしっかりと理解し、正確な手続きを行うことが大切です。ここでは、遺言書の効力や、相続における遺留分について解説します。

相続税に関する記事はこちら!

遺言書を発見したらどうしたらいい?

親が亡くなった後、遺言書が見つかることは珍しくありません。しかし、遺言書の内容をただ受け入れる前に、いくつかの確認が必要です。遺言書には以下の種類があり、手続きが異なります。

  1. 公正証書遺言:公証人によって作成された遺言書で、家庭裁判所での検認は不要です。
  2. 自筆証書遺言:本人が自筆で書いた遺言書で、家庭裁判所での検認が必要です。
  3. 秘密証書遺言:内容が秘密にされ、家庭裁判所の検認が必要な遺言です。

遺言書を発見した場合、遺言の種類に応じて、家庭裁判所で「検認手続き」を行う必要があるかどうかを確認しましょう。

検認手続きとは?

検認手続きは、遺言書の偽造や改ざんを防ぐための確認作業です。家庭裁判所で検認を行うことで、遺言書が正式なものとして取り扱われるようになります。検認手続きは遺言書の有効性を判断する手続きではなく、遺言書の存在や内容を確認するためのものです。

たとえば、自筆証書遺言の場合、親が亡くなった後に遺族が発見しても、そのまま効力を発揮するわけではありません。まず家庭裁判所で検認を行い、その後に相続手続きを進める流れとなります。

遺言の効力を争う場合

遺言書が見つかっても、その内容に疑問や不満がある場合、遺言の効力を争うことも可能です。遺言の効力を争うためには、以下の要件を確認しましょう。

意思能力の欠如:遺言が作成された時点で、被相続人(故人)が意思能力を欠いていた場合も、無効を主張できる場合があります。

遺言の方式違反:遺言書が法律で定められた方式を満たしていない場合、その効力が無効になる可能性があります。

偽造・改ざん:遺言書が偽造されている場合や、第三者によって改ざんされた場合、家庭裁判所でその証拠を提示することで、無効の判断を求めることが可能です。

遺留分とは?

相続において、被相続人が遺言で全財産を特定の相続人に渡すと指定していたとしても、他の法定相続人には「遺留分」と呼ばれる最低限の相続権が保障されています。遺留分は、特に親族間の公平な相続を守るために法律で定められた割合であり、特定の相続人が法定相続分を大きく下回ることを防ぐためのものです。

遺留分侵害額請求の手続き

遺言によって遺留分が侵害されている場合、相続人は「遺留分侵害額請求」を行うことで、自分の遺留分を取り戻すことができます。これは、遺留分に相当する金額を特定の相続人から金銭で請求するための手続きです。

遺留分侵害額請求の流れ

  1. 通知:遺留分が侵害されているとわかったら、相手方(主に遺言によって多く相続を受けた相続人)に対して、遺留分侵害額請求の意思を示します。
  2. 交渉:多くの場合、遺留分侵害額をめぐって相続人同士での交渉が行われます。ここでの話し合いが難航する場合は、弁護士などの専門家に相談することも検討しましょう。
  3. 調停や訴訟:交渉が成立しない場合、家庭裁判所に調停や訴訟を起こして遺留分侵害額の確定を求めます。

遺留分侵害額請求の期限

遺留分侵害額請求には期限があり、遺留分が侵害されていると知った日から1年以内、または相続開始(被相続人の死亡)から10年以内に請求しなければなりません。この期限を過ぎると遺留分侵害額請求の権利は失効します。

遺留分が侵害されるケース

たとえば、以下のようなケースを考えましょう。

  • 家族構成:母、長男、長女
  • 遺言の内容:「すべての財産を長男に相続させる」
  • 財産:現金1,000万円

この場合、長男がすべての財産を相続することになりますが、長女には遺留分の権利が認められます。

子のみの相続になるため、遺留分は2人で2分の1(500万円)。兄妹2人ですので、一人当たり250万円となります。

長女は250万円の遺留分が保障されていることになります。長女は遺留分侵害額請求を行うことで、長男から250万円を請求できる権利が発生します。

公正証書遺言と遺留分

公正証書遺言は、公証人が関与して作成されるため、その法的効力は非常に強固です。そのため、公正証書遺言の内容を無効とするのは難しいとされています。しかし、遺留分を主張することは可能であるため、たとえ公正証書遺言が存在しても、遺留分侵害額請求によって自分の権利を守ることができます。

まとめ

親が遺言書を残していた場合、次の手続きを行うことで、相続手続きを円滑に進めることができます。

  1. 遺言書の確認:遺言書の種類(公正証書、自筆証書、秘密証書)を確認します。
  2. 検認手続き:家庭裁判所で検認が必要な場合、速やかに手続きを行います。
  3. 遺留分侵害額請求:遺留分が侵害されている場合、相続人は遺留分侵害額請求を行うことで、自分の遺留分を確保します。
  4. 専門家への相談:遺言や遺留分で争いが生じた場合、弁護士や司法書士に相談することで、適切な対応を図ることができます。

親が遺言書を残していた場合、内容の確認とともに「遺留分」や「検認手続き」を進めることが大切です。遺言書の種類に応じた手続きを行い、法定相続分が保証されているかを確認しましょう。遺留分が侵害されている場合は、「遺留分侵害額請求」によって自身の相続権を確保する方法もあります。家族間のトラブルを避け、公平な相続のためにも専門家の支援を受けて冷静に対応しましょう。

親が認知症になったらどうする?財産管理の準備と選択肢

親が認知症になった場合、不動産の管理や売却には特別な注意が必要です。認知症などで意思決定が難しくなった場合、資産を動かすためには、成年後見制度や家族信託などの法的サポートが不可欠です。この記事では、成年後見制度・家族信託について詳しく解説します。

成年後見制度とは?

成年後見制度とは、判断能力が低下した高齢者の財産管理をサポートするための制度です。

後見人として指定された人が、本人の財産管理や契約を代行する役割を担います。

この制度を利用するには家庭裁判所に申請が必要ですが、認知症で判断能力が低下している親の代わりに不動産取引や資産運用を行う際に役に立つ制度です。

成年後見制度の手続きの流れ

成年後見制度の利用には、以下のステップが必要です。

  1. 申請:家庭裁判所に成年後見の申立てを行います。親族が申請を行うことが多いですが、医師の診断書などを添付し、判断能力が低下していることを証明する必要があります。
  2. 後見人の選任:裁判所が後見人を選任します。後見人には親族が選ばれることが一般的ですが、場合によっては弁護士や司法書士などが後見人になることもあります。
  3. 後見業務の開始:選任された後見人が、不動産の売却や財産管理などの後見業務を開始します。後見人は本人に不利益を与えないように、家庭裁判所の許可を得て管理や処分を行います。

成年後見制度は親の財産保護には効果的ですが、手続きに時間がかかり、裁判所の許可が必要なため柔軟な運用が難しい点があります。

家族信託とは?

家族信託は、成年後見制度に代わる柔軟な資産管理手段として注目されています。これは、財産の持ち主(親)が、信頼できる家族に財産管理を任せる契約であり、意思能力が低下した場合でも資産が凍結されず、引き続き運用が可能です。

家族信託のメリットには、以下の点が挙げられます。

裁判所の許可が不要:家族信託は家庭裁判所の監督を必要とせず、設定した契約に従って自由に資産を管理・運用できます。

財産管理の自由度が高い:信託契約の内容に応じて柔軟な財産運用が可能で、親の希望に沿った運用ができる点がメリットです。

家族信託の具体的な手順

家族信託を利用するための手順は以下の通りです。

  1. 信託契約の締結:親が意思能力があるうちに、信頼できる家族と信託契約を結びます。この際に、信託の内容(例えば、不動産の管理方法や売却基準など)を明確に定めておくことが重要です。
  2. 信託の登記:不動産を信託財産にする場合、登記を行い、財産管理のための名義変更が行われます。
  3. 信託業務の開始:契約に基づき、信託を受けた家族が親の財産を管理・運用します。

家族信託は、高齢者が認知症になった場合に備え、早めに準備を進めておくことが推奨されます。信託契約が成立していれば、成年後見制度を利用せずとも、親の財産を安全に管理できます。

家族信託と成年後見制度の違い

家族信託と成年後見制度は、どちらも財産管理をサポートする制度ですが、いくつかの違いがあります。

財産保護の目的
成年後見制度は財産の保護が強調されるため、厳格な監督が行われますが、家族信託は信託者の意向に沿った柔軟な運用が可能です。

柔軟性
家族信託は契約内容に基づいて柔軟な管理ができる一方、成年後見制度は裁判所の監督があるため、柔軟性に欠ける面があります。

手続きの簡便さ
成年後見制度は裁判所を通じて後見人を選任する必要がありますが、家族信託は信託契約を結ぶだけで手続きが完了します。

認知症対策としての家族信託と成年後見の使い分け

親が認知症になる可能性に備え、家族信託や成年後見制度をどのように使い分けるべきでしょうか。

家族信託の活用が適しているケース
親が健在で意思能力がある段階で、将来的な財産管理に備えたい場合に家族信託を活用するのが良いでしょう。信頼できる家族に資産を託し、煩雑な手続きをせずに済みます。

成年後見制度の活用が適しているケース
すでに親の判断能力が失われている場合には、成年後見制度を利用する必要があります。この場合、裁判所が後見人を選任するため、財産の保護が強化されます。

まとめ:家族と一緒に考える認知症対策

認知症などで判断能力が低下した場合、親の財産管理をどうするかは家族全体の問題となります。家族信託や成年後見制度を利用し、親が意思を示せるうちに計画を立てることが重要です。特に、親が認知症の兆候を見せ始めた際には、早めに専門家と相談し、最適な手続きを検討することが、親の資産を守り、家族間のトラブルを避けるための鍵となります。

親の財産管理を他人任せにせず、家族が協力し合い、信頼関係を築くことで、親が安心して老後を過ごせる体制を整えましょう。

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